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給与体系について

年収300万時代の人事給与講座

格差社会の人事賃金管理

本連載で“標準的な人は年収500万円”が上限―ということをお話しました。しかし、年収300万円時代においては、「標準的な人」が「平均的な人(アベレージ)」ではありません。「1億総中流時代」は崩壊しつつあり、「格差社会」が到来しつつあります。そこで今回は“格差社会の人事賃金管理”に一石を投じてみたい。今回はいささか極端なことを言わせていただきますことをご承知下さい。

ズバリ 10年もすればこのようになる!

日本は既に世界一高い賃金となっています。日本(特に製造業)はアジアの安い賃金労働者との競争をしています。付加価値は日本のほうがダントツに上だということならまだいいですが、アジア諸国のモノづくりの品質はもう日本とそれほど大差がありません。結論として国際競争力を高めるためには人件費は減額の方向に向かわざるを得ません。

予想その1 総人件費は間違いなくリストラしなければならない
予想その2 1,000万円もらえる“真のマネージャー(管理職)”と“年収300万円の人”に
        分かれ、その中間はゴッソリといなくなる

社員の“やる気”に頼れなくなってきた

日本はよく教育された良質の労働者に対して、平均的に高いレベルの人で構成しようと必死にやってきました。それが可能な経済市場と労働市場がありました。しかし、「成熟市場」「少子高齢社会」「ゆとり教育」「アジア諸国の追い上げ」がかつての活力を日本企業から急速に奪っていると感じます。つまり、人を雇用して収益を上げる仕組みの抜本的な見直しを迫られているのです。

今までのような「社員のやる気」を中心とした経営ではもう無理です。もちろん、社員のやる気は業績向上の手段の一つではありますが、大切なことは、儲かる仕組みを作って、経営を安定させ、賃金が上るからこそ社員はやる気を出す、ただそれだけです。

もう2、3年もすれば“人事倒産”という言葉が新聞紙上を賑わすような気がします。若年労働力の低下により、人材の質は明らかに低下しています。基礎学力、生活能力、働く意欲、学ぶ意欲‥‥、つまり総じて人生に対する意欲が低い社員が少なからず出現してきます。結果として、所得が上らず、未婚のままである確率も高くなります。企業が専門的な知識・技能を教育する“以前の問題”を多く抱えるのです。

日本の企業は、今でも社員全員を平均レベル以上の人ばかりで構成しようとし過ぎているように思います。「個人の能力を高めよ、資質を向上させよ」ということで、一人ひとりの判断能力に頼ってきたのです。比較的、基礎学力のしっかりした勤勉な労働力人口と過去の成長期においてならそれが可能であったでしょう、しかし、昨今、それを改めざるを得ない時期が来ているのです。

これからの人事賃金管理のポイント 「人に頼って、頼らない経営」

100人の会社なら100人全員が優秀なんてことはありえませんし、またその必要もありません。賃金ももう全員は上げれませんから。これからの人事賃金管理のポイントは“人に頼って、頼らない経営”ということです。具体的にはやる気のある少数の管理職(年収1,000万円社員)には徹底的に要求しながら、儲かるシステムを作って、やる気・能力ともに“並以下”の社員(年収300万円社員)とも共存していく―というものです。

人に頼って、頼らない経営 5つの要諦
その@ 良い定着と悪い定着を見極める
そのA やる気のある人にだけに教育投資する
そのB 組織作りとは優秀な少数の管理職とシステム化と考える
そのC 管理職のスカウトに常に目を光らせる
そのD 管理職には1,000万円払うことを目標にする
その1 良い定着と悪い定着を見極める

筆者は社員の入退社に関して役所への事務手続きを代行する社会保険労務士事務所を経営しています。ですから、いかに中小企業の「人材の回転」が速いか、つまり、定着が悪いかが手にとるようにわかります。そこで気付くことがあります。会社には「良い定着」と「悪い定着」があるということです。

良い定着=定着すべき管理職・熟練工がしっかり定着している
悪い定着=とりあえず他へ行くより楽だと考えて定着している

ハッキリ申し上げて、定着が良い会社が業績が良いか?というと実はそうではありません。製造業は定着と品質は比例するでしょうから、定着と業績は相関関係があるでしょう。しかし、卸売業、小売業、飲食業、サービス業などの非製造業では、全社員の定着が良すぎて業績が下がっていることさえあります。つまり、社風が甘い、社長・管理職の方針徹底力が弱い、戦う集団ではないことが多いからです。しかし、定期昇給は少ないながらボチボチ継続します。そして徐々に社員は高齢化していって活力がなくなり、稼ぎ・働きにしては賃金が多い人ばかりになるのです。つまり、一人当たり粗利がドンドンと下がり利益が叩き出せなくなるのです。

ですから、ダメだと思われる人材については、まず賞与、そしてそれでも奮起が見られない場合は賃金を下げるべきです。もちろん、評価はしっかりと説明し、どこが良くてどこが悪いのかは明確に示してあげることは大前提です。問題のある人ほど自分が問題であることがわかっていませんので、ここは手を抜かずに徹底して行いたいです。このようなホドホドの緊張感があれば、ぶら下がりたい人は自分から辞めていきます。

それから勇気を持って解雇することも考えたい。解雇することはリスクですが、“解雇すべき人を残すこともリスク”なのです。弁護士、社会保険労務士は「解雇するリスク」は教えてくれますが、「解雇しないリスク」は教えてくれません。それは社長が経営という全体の枠で判断するしかありません。結局は社長が“どこで腹をくくれるか”にかかっているのです。

その2 やる気のある人にだけに教育投資する

もともとやる気がない人に、会社がやる気を持たせることができるかと言えばそんなことはできませんし、やる必要もありません。これから益々、やる気に格差が出ます。このやる気の格差は能力格差となり、結果として大きな賃金格差となります。仕事をさせていただく、奉公させていただく、という勤労観を持つ人も少なくなっていますので本当に悩ましい問題です。

これからはやる気のない人は教育・育成の対象から外すべきです。会社の存在意義は社会貢献であり、業績向上による利益確保であって学校ではないからです。筆者は仕事がら研修を依頼されることが多々ありますが、最も研修効果が上るのは「やる気と伸びる意欲がある35歳ぐらいまでの若手」です。教育・研修費用はココに重点的に使うしかありません。逆に言えば、しっかりと早期に選別して、教育投資を行い、少数の優秀な管理職を育てあげなければ会社の将来はありません。

40歳を過ぎた“私は私なりに(マイペースで)やっています”という人には研修よりも、課題を与え、やってほしいことを要求し、その出来栄えをチェックをすべきです。ココが一番しんどいですが、どこかのコンサルタント会社に研修費を払って丸投げできない部分であることを肝に銘じる必要があります。もし何度言ってもダメな場合は賃金、賞与にも手をつけざるを得ないということです。結果として、年収300万円をウロウロとする人で終わるということです。

その3 組織作りとは“優秀な少数の管理職”と“システム化”と考える

中小企業というのは、企業規模にあった優秀な管理職の頭数がいれば絶対に難局を乗り切っていけます。問題は優秀な少数精鋭管理職がいないことと、人に頼らないシステム化ができていないことです。たとえば、社員100名の会社に営業、製造、総務に1名ずつ真の管理職がいれば、一般社員が並以下の能力でもやっていけます。その“真の管理職”はその下には最低1名、できれば2名の腹心を作ります。社員100名の会社の場合、この管理職には最低年収800万円以上、管理職の腹心には500‐600万円以上を支給します。組織作りというのは、ピラミッド構造の社長及び管理職が一枚岩になることと、社員の質・やる気に左右されにくい仕組みを作ることをいうのです。

その4 管理職のスカウトに常に目を光らせる

これから必要なのは“真のマネージャー・管理職”です。真の管理職といっても、突然の退職、思うように伸びないなど管理職育成の悩みが尽きないのが中小企業です。ですから、社長は外部にコレという人物がいないか目を光らせ、ココというときにはスカウトします。筆者の顧客にもこのようなスカウトが誠に上手な社長がおられます。その社長の手口は、まず飲みに誘って悩みを聞いたり、将来の希望を聞くなど、自分から出向いて積極的に本人に接触しています。既存の管理職も含めて、関与先、知人などに候補はいないか?と常日頃からスカウトのアンテナを張ることが重要です。そうすると“ひょっこりと”掘り出しモノが出てくるものです。

その5 管理職には1,000万円払うことを目標にする

少数精鋭管理職には徹底的に出すモノは出して働いてもらうということです。実は日本企業には真のマネージャー(管理職)がいないことが問題なのです。管理職も一般社員もそれほど実力差がないというのが一般的です。現状では社員100名未満の会社の管理職年収は700万円支給されていれば良いほうだといえます。 しかし、管理職には最低年収800万円以上を支給するようにしたい。ホンネは1,000万円以上を払いたいところです。管理職はやる気のある一般社員が“あこがれ”を持てる賃金でなければなりません。管理職の賃金が600万円程度なら、ホドホドにやって400万円程度でもらえればいいという「下流志向の人」が増えています。

難しい数値をこねくり回した賃金理論はもうたくさんです。中小企業でも管理職になれば1,000万円もらえると言えばいい。これは伸びる意欲がある若手社員にとっては励みになる旗印となるに違いありません。

つまり、これからは、300万円〜400万円の人が多数いて、500万円、600万円の人がポツリ、ポツリ‥、800万〜1,000万円以上の人がポツンといる、後はみーんなパートタイマー‥‥結果、人件費総額を削減!そんな組織になります。今、日本企業が戦っている土俵(グローバルスタンダード)はそういうルールですから回避しようがないのです。

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