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“駆け込み寺別”労使トラブル解消

福田事務所は労使トラブルの予防からその解決までを得意としています。労働問題は“超・後ろ向きな対応”ですから、いかに弁護士さんに依頼する(訴訟になる)前に解決するかがポイントになります。

労働者の“駆け込み寺”は以下のようなものがあります。

□ 労働基準監督署
□ 総合労働相談コーナー(労働局内)
□ 労働審判制度(地方裁判所)
□ 訴訟(地方裁判所)
□ 合同労組・地労委

労働基準監督署に駆け込まれたら?

従業員が労働基準監督署に労基法違反について訴えることを「申告」といいます。労働者からの申告があれば、労働基準監督署はその申告事案について「迅速かつ優先的に」対応することになります。ここで注意すべき点は、申告があればその申告事案(例えば、一人の従業員が残業代支払いについて申告があれば、この事案)以外に会社全体の法違反の可能性まで調査されるということです。ここに「一人の労働者の救済」よりも、「民間企業に労働基準法を遵守させること」がその使命であるという、労働基準監督署の姿勢がよく表れています。

労働基準監督署が調査に入ると、会社全体に対して以下のようなことが問われます。

  1. サービス残業はないか?
  2. 適正な労働時間管理(始業・終業時刻の管理等)はされているか?
  3. 過重労働はないか?
  4. 適正な賃金台帳であるか?
  5. 健康診断を実施して結果を管理しているか?
  6. 年次有給休暇の取得状況はどうか?管理しているか?
  7. 管理監督者はその要件を満たしているか?
  8. 36残業協定は提出しているか?

などが総合的に調査されます。労働基準監督署は申告事案の処理にとどまらず、その会社「全体」そして「将来」に向けて労働基準法の遵守に目を光らせるということです。

申告が行われれば調査の対象となりますので、モメた社員さんの対応と同時に、会社全体の労働基準法遵守に向けてしっかりと取り組まざるを得なくなるということです。特に裏技はなく、まっとうに改善していく他ないと思います。

もし、サービス残業の事実が確認されれば、2年以内の遡及支払いを要求されることがあります。2年間というのは賃金支払いの時効です。ただし、労働基準監督署に2年間まるまる遡及払いを要求されることは少なく、おおむね3ヵ月程度の遡及支払いにとどまることが多いと思われます。一般に2年分の残業代の支払いとなると、会社側にも言い分があることも多く、その会社の全従業員分となると、そもそも払う余力がないこともあります。労働基準監督署はよほど明確かつ悪質な事案でない限り、申告した労働者の2年分の不払い残業については、民事上の訴訟や強制執行手続等の取り立て方法を、労働者に紹介するにとどめるようです。労働基準監督署は労働基準法違反による賃金不払いであっても強制的な取り立て権限をもっているわけではないからです。

つまり、労働基準監督署は労働者の“駆け込み寺”の代表ではありますが、労働基準法に定めのない民事的な紛争について監督権限を持っていません。ですから、納得のいかない労働者は、「労基署はアテにならない!」と不満の声をあげながら、次に述べる「総合労働相談コーナー」「裁判所」「合同労組」のいずれかへ、その“駆け込み寺”を変えていくことになります。会社としては、モメている労働者とは、「労働基準監督署」や「総合労働相談コーナー」の段階で円満解決(和解)をしておきたいところです。

総合労働相談コーナーに駆け込まれたら?

「総合労働相談コーナー」というのは、「労使間における民事上のトラブル処理のために行政が設置した役所」です。これは全国各地の労働局内にあります。民事上のトラブルとは「解雇」「セクハラ」「労働条件の不利益変更」などです。「個別労働紛争解決促進法」という法律が施行されたことを受けて全国に設置されました。個別労働紛争解決促進法という法律は、リストラ・賃金カットなどの進展とともに個別労働紛争が増加したことに対応したものです。労働者の“駆け込み寺”は労働基準監督署が代表的なのですが、その監督権限は限られています。ところが最近は労働基準法に定めのない個別的な労働紛争が増加の一途をたどり、労働行政としてもこれに対応する必要があったわけです。つまり、現在の日本の労働行政の紛争解決システムは「労基法違反についての労働基準監督署の監督行政」と「労使の民事紛争についての総合労働相談コーナーによるサービス行政」の2本立てになっているということです。

総合労働相談コーナーには、個別労働紛争を解決するために次のような機能を持っています。

  1. 総合労働相談コーナーにおける労働者・事業主に対する情報提供・相談
  2. 都道府県労働局長による助言及び指導
  3. 紛争調整委員会によるあっせん

「(1)総合労働相談コーナーにおける労働者・事業主に対する情報提供・相談」とは、過去の労働法規判例に関する情報提供を行うことで、法制度を周知徹底させて「無知による紛争」を未然に防ぐことを目的にしています。

「(2)都道府県労働局長による助言及び指導」とは、相談員が事情を聞いたうえで、労働法規や判例を基に明らかにおかしいと思える事案について、当事者に助言及び指導を行います。例えば、「解雇事由が不十分なので裁判になったら不当解雇になるので撤回するべき」などです。

労働者の駆け込みにより行われる「(3)紛争調整委員会のあっせん」は紛争がこじれて容易に解決できそうにない場合に行われます。あっせんとは話し合いにより形成される合意に基づく紛争解決のことです。都道府県労働局長は、紛争の当事者である労働者又は会社から、あっせんの申請があった場合において個別労働紛争の解決のために必要があると認める時は、紛争調整委員会にあっせんを行わせます。この紛争調整委員会は、委員として弁護士や大学教授などの学識経験を有する者が選ばれます。このあっせんへの参加は強制でなく、もちろんあっせん案の受託も強制ではありません

さらにこのあっせんは、あっせん申請受理後概ね1ヵ月以内で処理するものとされ、あっせん期日は原則として1回で決着することになっています。ですから、労使の関係が悪化し、事がこじれてしまっている案件や複雑な案件には不向きと言えます。

しかし、会社としてはまったくの争いの余地のない事案は参加を拒否してもいいですが、何らかの落ち度がある場合は積極的にあっせんに参加すべきです。この場を利用して、できるだけ円満解決に向けて誠意ある対応をとることをお勧めします。訴訟になることを思えば、早期に金銭解決ができる可能性を探れるというメリットがあります。

労働審判制度に申立てられたら?

労働審判制度の特徴は、時間・労力・費用のかかる通常の民事裁判ではなく、「労使関係に関する専門的な知識経験を有する者」と裁判官が一緒になって審理し、迅速で柔軟な解決をすることができる司法制度です。迅速性といえば、3回以内の審理で、申立てから2〜3ヵ月以内で審判が出ます調停の要素もあり、専門的助言を受けながら双方の意向をふまえた調整的な審判を出すことも可能なようです。もちろん、司法制度ですから、司法的判定がなされ、それが確定すると強制力を持つことになります。

現行の労働法制では、解雇に不服な労働者が会社を相手取って裁判を起こす場合、訴えの目的は解雇の無効確認に限られています。つまり、勝ち負けのどちらか決着がつくまで攻撃と防御を繰り返すことになります。一方、労働審判においては審理の経過をふまえた調整的な審判を出すことができます。解雇は有効だ(会社の言い分は通る)けど、30%は会社にも非はあるので職場復帰が難しいなら金銭解決したらどうか、という審判も出ることもあるようです。審判に対して異義申立てがあれば通常訴訟に移行することになります。

労働審判では通常訴訟と同様にしっかりと証拠調べが行われます。たとえば、不当解雇の争いにおいては、解雇の正当性は会社側に立証責任があります。特に3回以内の審理で審判が出る“短期決戦”なので、会社側は最初の段階で、しっかりとした“書類”を出す必要があります

労働契約法の「解雇は、客観的合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合はその権利を濫用したとして、無効とする」を満たす内容でなければ不当解雇となってしまいます。

労働審判制度においては、原則として弁護士さんでなければ代理人となることができません。もちろん、社長さんが管轄の地方裁判所に出向けばいいのですが、そんなヒマはありません。ですから、労働審判となったら、早期に弁護士さんに御願いすべきです。

労働審判手続は、申立書、答弁書、早期の証拠提出、3回以内という短期間の記述で争点と証拠の整理、口頭での弁論、証拠調べを行い審理を終わらせないといけません。ですから、このような迅速な手続き進行のためには弁護士さんの能力は不可欠といえるのです

なおここでいう証拠とは、就業規則、始末書、解雇理由証明書、雇用契約書、上司・部下・同僚等の陳述書又は証人などです。

ただし、解雇の争いの場合、ソモソモ正当な解雇事由がない、証拠がない場合は弁護士さんに依頼しても負けるものは負けるのです。経営者はしっかりとしたプロセスを踏んでいない解雇問題は弁護士さんに依頼してもなんともならないことを知っておくべきです。

なお、労働審判制度はその迅速性・コストパフォーマンスから、今後の紛争解決の主流の紛争解決制度となっていくでしょう。

訴訟をおこされたら?

裁判上の手続きとしては、裁判手続と調停手続の2種が考えられ、裁判手続はさらに「仮処分手続」といわゆる「本案訴訟」に分かれます。

たとえば解雇問題が起こったとします。不当解雇されたと争う労働者は、「本案訴訟」と同時に「仮処分手続」の申立てをすることが一般的です。仮処分というのは、とりあえず、本案の結論(解雇が有効か無効か)が出る前に「仮に」解雇された労働者の身分を定めておく手続きです。「日本の裁判は長い」と言われますが、訴訟が開始されてから結論が出るまでは数ヵ月から数年を要します。不当解雇の判決は平均約1年半を要しているようです。この間、解雇された労働者の側に立ってみれば、賃金を受け取れない状態が続くことになり、本人やその家族の生活が困窮することになります。そのような不合理を救済するために「とりあえず会社の従業員として扱っておくの」べきなのか、「とりあえず従業員として扱わなくてもよい」のかを決める手続きが用意されているということです。

仮処分の申立てが認められれば、会社はその間、賃金を払いながら訴訟を続けなければなくなり、小さな会社ほどその影響は甚大だと言えます。また、最悪の結果として解雇された労働者が会社に復帰することも考えられます。さらに、簡易裁判所以外は総務部長さんなどが代理することはできませんから、社長自らが出頭しなければなりません。ですから、弁護士に依頼することになり、弁護士費用等も100万や200万単位でかかってきます

訴えられたら弁護士に依頼して、処理してもらうべきです。できれば、判決に至る過程で早期に和解金を払って和解にもっていきたいところです

ご存知のとおり、日本は「解雇権濫用の法理」というものが定着しています。つまり、原則として雇用契約の解消は労使の自由ですが、経営者からの一方的な雇用契約の解除は制約があり不自由であるということです。これは終身雇用・年功序列という雇用慣行を背景に、裁判所の判断の積み重ねにより出来た雇用ルールといえます。解雇というものは出るところに出たらその多くは不当解雇になってしまう―ぐらいの認識でちょうど良いと思います。つまり、経営者にとっては厳しい判断がなされるということです。

さまざまな感情論があると思いますが、負けると分かっている、また負ける可能性があるなら絶対に争わないことです。「会社を辞める人間とケンカをしない」が大原則です。辞める人間とケンカしても何のメリットもありません。訴訟になれば多くの経営資源(時間、お金、エネルギーなど)がそちらに削がれます。これは経営的に大きなマイナスです。ですから、訴訟になる前に金銭的に和解して示談書を締結すべきなのです。経営論でいえば、“訴訟にしてしまったら負け”といえるでしょうか。

合同労組・地労委に駆け込まれたら?

合同労組とは中小企業の労働者を中心に、企業の枠を超えて地域・職種別等あるいはそれにかかわらず、個人加入の形態をとっているものです。このような個人で加入できる労働組合は、労働者の“駆け込み寺”としての存在です。労使紛争の当時者となることも少なくありません。 → ”合同労組対応”参照

地労委とは地方労働委員会のことです。この地方労働委員会は“労働組合の駆け込み寺”的な存在です。労働委員会の組織は、中央労働委員会の下に各都道府県単位で地方労働委員会があります。労働組合はまずは地方労働委員会に駆け込むことになります。労働委員会には労働組合の係わる労使紛争を取り扱う行政機関として、@不当労働行為の救済、A労働紛争の調整、という2つの機能があります。「不当労働行為」というは次の禁止事項を会社が行うことをいいます。

  1. 団体交渉の拒否
  2. 労働組合であることを理由とする不利益変更の扱い
  3. 支配介入

たとえば、団体交渉に応じなかったため、(1)の「団交拒否」という理由で労働組合から地方労働委員会宛てに「団体交渉の促進」等を申請事項として「あっせん」の申立てがなされるなどが考えられます。労働委員会の機能は、あっせん・調停・仲裁という3つがありますが、「あっせん」が最も利用しやすく数が多いものです。しかし、この「あっせん」手続きに参加するかどうかは任意となっています。

あっせん手続きに参加するかどうかは、会社の方から何らかの譲歩することがありえるかという部分がポイントだと思います。裁判などで争っても敗訴が濃厚な事案も参加したほうが良いでしょう。ただし、法的にも一歩も譲れない(譲る必要がない)のであれば参加する必要がないと言えます

次に会社があっせんに参加せず、また参加しても話がまとまらなかった場合には、労働組合は地方労働委員会に不当労働行為救済の申立てをすることが通常です。 手続きとしてはまず地方労働委員会において、書面で双方の主張をします。おおむね、裁判所の口頭弁論手続、証人尋問手続と似た手続きになります。この不当労働行為申立手続の場合は、あっせん手続と違って参加が強制されます。

つまり、地方労働委員会から「不当労働行為救済申立書」が送付されてきた場合はそれを放置することはできません。

まずは、申立書に対する答弁書の作成から始まり、相手の主張事実の認否、会社の主張を積極的に展開することになりますので、弁護士さんのお力を借りることになるでしょう。

このような手続きを経て、不当労働行為であると認められてしまった場合は、地方労働委員会は救済命令を発することができます。この救済命令には団交応諾命令、解雇などの場合の現職復帰命令などがあります。ただし、審査後の命令には直ちに法的強制力はありません。

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