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解雇・リストラ支援

経営論からの労働法務

会社存続の危機に立たされたときに経営者はどのリスクをとるのかということだと思います。賃金カット、解雇問題なども同様です。

「不利益変更を実行するリスク」と「不利益変更を実行しないリスク」
「解雇を実行するリスク」と「解雇を実行しないリスク」

実はどちらもリスクなんです。弁護士、社会保険労務士は「不利益変更を実行するリスク」はしっかりと説明してくれますが、「不利益変更を実行しないリスク」というのは説明してくれません。というか、経営のプロではないのでよくわかりません。

経営という大きな枠組みで、どのリスクをとるかを意思決定できるのは経営者だけなのです。結局、経営者が“どこで腹をくくれるか”にかかっています。

不当解雇−“負け戦”をやらないために

労働契約法に「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とあります。

ご存知のとおり、日本は「解雇権濫用の法理」というものが定着しています。つまり、原則として雇用契約の解消は労使の自由ですが、経営者からの一方的な雇用契約の解除は制約があり不自由であるということです。これは終身雇用・年功序列という雇用慣行を背景に、裁判所の判断の積み重ねにより出来た雇用ルールといえます。解雇というものは出るところに出たらその多くは不当解雇になってしまう―ぐらいの認識でちょうど良いと思います。つまり、経営者にとっては厳しい判断がなされるということです。

さまざまな感情論があると思いますが、負けると分かっている、また負ける可能性があるなら絶対に争わないことです。「会社を辞める人間とケンカをしない」が大原則です。辞める人間とケンカしても何のメリットもありません。訴訟になれば多くの経営資源(時間、お金、エネルギーなど)がそちらに削がれます。これは経営的に大きなマイナスです。ですから、訴訟になる前に金銭的に和解して示談書を締結すべきなのです。経営論でいえば、“訴訟にしてしまったら負け”といえます。労働法を勉強して相撲をとるということは相手の土俵で戦うということです。それでは勝てない。勝てる土俵で相撲をとればいいのです。

エビデンス、証拠無くして解雇・不利益変更なし

しかし、イザとなったら戦えるような準備をしておくことが大前提です。たとえば解雇に求められることは、「このような不都合が事実としてありました。証拠はこれです。だから、就業規則第○条に基づいて解雇しました」というものです。

解雇理由証明書を請求されなくても、会社は解雇者を出す場合はこのような書面を作成しておくべきです。つまり、しっかりと事実を立証できて、それを書面に記載できるような理論武装ができていなければ解雇をしてはいけないのだといえます。ここで言う証拠とは、就業規則、始末書、改善指導書、人事考課表、解雇理由証明書、雇用契約書、上司・部下・同僚等の陳述書又は証人などです。

賃金カットは解雇より難しい?

よく「賃金はいくらまでなら下げることができますか?」と聞かれることがあります。

その答えは「原則として1円も下げることができません」となります。賃金は一度上げると従業員の既得権となりますから、その引き下げはとても難しいのです。賃金を引き下げることができるのは、おおむね以下のいずれかの場合に限られます。

  1. 労働者との合意によって労働契約を変更する
  2. 役職を降りるなどの職務が変更になる
  3. 就業規則(賃金規程)上に明確な根拠があり、相当の合理的理由がある
賃金と賞与の違い
  月 給 賞 与
法的には 債権である 支払いを約束していなければ債権ではない
支給原理 「仕事」に対して支払う 「成果」に対して支払う
減額 難しい
相手(従業員)の同意が必要
容易
相手(従業員)の同意は不要

特に賃金引下げは労働条件の重要な不利益変更です。降格・減給規定を新たに設けても実際に減給者が出るような場合は、「高度の必要性」に基づいた「合理性」が問われます。

たとえば、毎年の評価によって賃金が上がることもあれば、下がることもあるということを合理的に示したければ、全部を基本給として表示するのではなく、一部を「能力給」や「成果給」という名称にして「この部分は査定のうえ増減額する部分である」ことを明確にした「賃金規程」と、その査定の根拠である「人事考課規程」を整備するべきです。よく経営悪化により社員の同意もなく5%一律カットなどを行っている会社がありますが、訴えられると違法無効と判断され遡及払いをしなくてはなりません。

リストラ・人員整理

業績の悪化により大規模な人員整理を行わなければならないことがあります。人員整理の最大のリスクは不当解雇よりも「辞めてほしくない人が辞めること」です。会社はなんとかV字回復させるために必要な人物は絶対に辞めさせないように配慮します。

人員整理の要諦はスケジュールと情報を出すタイミングです。人員整理のおおまかな手順は以下のようなものです。

  1. 直近の決算書及びそれ以降の試算表から必要な人員削減による人件費削減額を算出する。
  2. 退職金規程から退職予定者の会社都合の退職金額を算出する
  3. 対象者への提示メニューを固める(退職金の上乗せ、再就職支援、特別休暇等)
  4. 辞めて欲しくない社員に「君は会社にとって必要な人材である」と根回ししておく
  5. 対象者の面談に備え想定問答集を作る
  6. 対象者を個人別に事情説明し退職勧奨を行う。又は経営状況の悪化から希望退職を行う旨を労働組合又は従業員に説明する。
  7. 整理解雇の4要件(@経営上の必要性、A整理解雇回避努力、B解雇対象者の選定の合理性、C手続きの妥当性)をふまえて退職勧奨又は希望退職を行う。
  8. 選定の合理性を確保するためには複数人の人事考課が必須(他、世帯主か否かの“被害度”、パート、嘱託等の非正規社員などの“密着度”も考慮)
  9. 退職金が一括で払えない場合は、解雇対象者と個別の分割払いの契約をする

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