報酬の納得性は他人との比較に有り!
最近、特に「勝ち」と「負け」がハッキリとしてきたのではないかと感じる。景気が上向いてきているとはいえ、残念ながら、賞与が出せない企業がある。業績が悪い企業に限って、キッチリと従業員一人ひとりと向き合い、評価し、それをフィードバックしていないか、又は、疎かにしているのではないだろうか。
今年も賞与が出せないA社
A社は従業員45名の呉服卸売販売業。業績低迷のためここ1年間の賞与の支給状況は、
◎昨年の夏季賞与:一律5万円
◎昨年の冬季賞与:ゼロ
◎今年の夏季賞与:一律2万円
「本当はゼロでも良かったが、少しでも出してやりたかった。額も少ないのでそれほど差をつけることもないだろう」というのが社長の言い分だった。従業員へのアナウンスは、「今年も大変厳しい状況なので、寸志程度しか出せない。理解してほしい」とだけアナウンスをした。しかし、現場の不満が爆発した。「会社が厳しいのはわかるが、どうしてこんなに頑張っているオレとぶら下がっているあいつが同じ額なんだ。もうやってられない。会社はどこを見ているんだ!」という声が一部のよくやっている従業員から上ってきた。それを受けて社長は言う。「2万円の原資で1000円、2000円の差をつけても仕方がないじゃないか!」
公平理論『エクイティー理論』)
賃金・賞与制度に関する検討を行う前提として、従業員は自分の報酬の満足・不満足を、他人の報酬との比較の中で認識するということを念頭におく必要がある。
公平理論とはモチベーションに関する理論の一つである。この理論によれば、 従業員は自分が受ける処遇(賃金、賞与、福利厚生、仕事環境など)を自分が会社に与える貢献(努力、能力、経験など)との比でとらえ、これを他の従業員の処遇と貢献の比と比較して見る。
この理論のポイントは自分の処遇と貢献の比を絶対的に評価するのではなく、他人の比と比較して評価するという点にある。
公平理論から見れば、他人との比較で自分が割りを食っていると感じれば、公平性の認識が回復されるよう、以下の5つの行動をとるとされている。
1) 会社への貢献を小さくする
つまり、あまり熱心に仕事をしなくなる。頑張ったら損と自分に言いきかせてしまう。
2) 処遇・待遇をなんとか自力で上げようとする
これは、賃金額そのものは自分で変えることができないという認識をもとに、モラルハザードに結びつくことを指す。たとえば、自分の貢献に比して、賃金が少ないのだから、ダラダラ残業をしたり、出張経費をごまかしたり、会社の物品を窃盗したりするケースである。
3) 自分および他人の貢献と処遇に関する認識を変える
たとえば、現金としての処遇だけでなく、会社に在籍することに対するさまざまな恩恵、つまり、福利厚生、雇用の安定、将来の夢の実現なども含めて認識する。
4) 処遇の対象に対する認識を変える
比較の対象を同じ職場で働いている従業員ではなく、たとえば、同業他社で働いている従業員や、周囲の人間と比較してみたりする。
5) 比較そのものから退く
つまり、仕事(=会社)を辞める。
額が少ないから一律支給は正解か?
パートさんへの寸志も含めて、私は額が少ないからこそ工夫や演出がいると思っている。十分な説明もいる。一律支給してしまう会社に限って、一人ひとりにスポットライトを当てていない。全員一律◎万円は公平なようだが、もっとも不公平だ。もっと言うなら、賞与がゼロでもキッチリ評価し伝えるべきだと思う。
実は、事例のA社は今年も人事評価はやっていて、SABCDのランクがついていたそうだ。それなのに一律支給をやってしまった。その背景には評価は賃金に格差をつけるものという考え方があるようでならない。
評価は賃金を決定するためのものではあるが、経営の意志を伝える重要なツールでもある。
たとえ額が少なくても、影でまじめにコツコツ頑張っている人を賞賛し、ささやかでも良いので格差をつけてほしい。その理由を本人に説明してほしい。経営サイドの原資の配分から見ると些細なことだが、評価のメッセージが本人に伝わるのならその効果は計り知れない。
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