家族手当は存続すべきか?廃止すべきか?
従業員100名以上300名未満の企業の昇給に関する統計によると
平成13年=2765円
平成14年=1997円
平成15年=1928円
(賃金引上げ等実態調査結果:厚労省)
同統計調査の平成元年から平成4年までの従業員100名以上の企業の昇給平均値は13404円だった。まさに隔世の感があり、3000円の昇給も大変な時代となった。
人件費の効率的に配分をめざして、大手企業は個人業績とは無関係な手当を廃止する傾向にある。
我々、中小企業はどう考えるべきか?
20代、30代の独身社員中心のA社
A 社は従業員80名の卸売販売業。業界ではめずらしく20代、30代の若手社員が大活躍している。それが社長にとっても自慢の種である。景気も好転し平成16年4月にはここ3年間ストップしていた昇給を若手中心に行った。社長が最近、気になり出したのは家族手当に関する規定である。
第◎条 (家族手当)
家族手当は扶養家族のある従業員に支給します。扶養家族とは、次に掲げる者のう ち、主として従業員の扶養を受けていると会社が認める者をいいます。
(1) 配偶者
ただし、年間収入が、税法で定める配偶者控除を受けられる額を超える場合を除きます。
(2) 満18歳未満の子(高校在学中の場合は卒業まで)
(3) 家族手当の月額は次のとおりとします。
配偶者 15000円
子1名 5000円
社長は、家族手当は決して嫌いな手当ではない。しかし、3000円の昇給が難しい時代だ。賃金に割高感のある40代、50代の社員に家族手当でさらに、2万〜3万円を支給している一方で、成長著しい若手の賃金のアップが乏しいことに対する矛盾を感じざるを得なかった。
家族手当は何のために
家族手当の目的は「生活補助」と「思いやり」の手当だと思う。この意味で充分合理性のある手当だ。しかし、昨今、この「合理性」をよく検証しなくてはならない場面に出くわす。
@人件費の効率的配分
A社のように社内で活躍している人材が独身者のケースが増加してきた。特に IT関係、広告関係などその割合は3分の2を越しているケースも見受けられる。 社長は今よくやっている人間に賃金アップしたいし、賞与を積みたい。個人の実績に無関係に発生する家族手当は効率的な人件費配分の自由度をなくしてしまうことになる。
A家族構成・ライフスタイルの変化
40代になっても独身の男女が今後増えるだろうし、結婚しても「男が働きに 出て女が家庭を守る」というライフスタイルは過去のものとなるはずだ。『「 年収300万円時代を生き抜く経済学」 森永 卓郎氏 著』という本が売れている。現状の日本の賃金は世界一高い賃金である。この本にあるように賃金について下方の圧力が加わることは間違いなく、おそらく、日本においても、一昔前にアメリカで流行った「ダブルインカムノーキッズ(DINKS)」 (夫婦共働きで子供なし)が増え、“世帯で”500万円〜700万円の年収(→親の世代よりも豊かになれない世代)になるのではないだろうか。
日本の年金財政を考えても憂える合計特殊出生率(一人の女性が一生に産む子供の数)が先日発表された。その出生率は過去最低の1.29であった。100年安心の年金改革の屋台骨がゆらぐ数字だ。つまり、子供は2人以上生む女性はどんどんいなくなる傾向にあるということだ。
(大企業のトレンド)
三洋電機や松下電器でも家族手当を廃止・改変へ動き出している。理由は上記のとおりだ。そのかわり、育児補助制度など「子育て支援」の施策を中心に打ち出している。三洋電機は「家族サポート制度(仮称)」として、出産や子供の進学など節目に応じて一時金を支給する。
また、松下電器は、子供一人あたり月額8000円を支給する制度とし、子供の数が多ければ多いほど金額が増える仕組みにした。旧制度は配偶者2万1000円、供の人数にかかわらず6000円を支給していた。独身者からは「仕事に関係のない部分で差がつくのはおかしい」との声が出ていたという。
家族手当をどう考えるか
最近、大企業を中心に「成果主義、家族手当廃止」などの情報が新聞紙上に出ているため、中小企業の経営者も「家族手当は不要なのではないか?」という意見に傾いてきたように思う。私も家族手当は実力主義、能力主義の観点から見て、早晩、廃止される傾向にあると思っている。
しかし、現実の私のお手伝いでは、新賃金制度の導入時に70%の割合で家族手当を存続させている。 た だし、段階を追って基本給や諸手当に組み入れることで廃止している。家族手当は生活給なので、いきなり金額を減額しないことだ。
家族に対しての「思いやり」はそのままに
家族手当を廃止したからといって、会社、管理職が従業員の家族に対して思いやりを示すことは忘れてはいけないと思う。
「下事に通じていなくても良いが、下情には通じていなければならぬ」
(「経営の行動指針 土光敏夫著」より)
「下事に通じていなくても良い」というのは、自分の役割をしっかり認識し、いたずらに下部の細か い仕事に上司が首をつっこんではいけないということだ。課長が係長の仕事をし、係長は平社員の仕事をし、平社員は雑務をする“ていたらく”をしてはいけないという戒めである。「下情に通じていなければならぬ」とは、部下一人ひとりが、いまどのような心境にあり、いかなる悩みを秘め、どんな不満を持っているかについては洞察しなくてはいけないということだ。部下への情愛とか思いやるということは、彼・彼女の家族状況まで知悉し、配慮しているということである。
会社が従業員やその家族に思いやりを示す方法は家族手当だけではないはずだ。貴社では従業員の家族に対する思いやりの施策を何か打っていらっしゃいますか?
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