”イズム”リーダーを発掘する360度評価
「異常な会社」
昨日、あるメーカーの顧問先のプロジェクト会議に参加させていただいた。
社長は以前できていたことが最近出来なくなってきた、モノ作りの力が落ちてきたことを述べられた。
「我が社は今まで他社では出来ないことをやってきたから成長してきた。このままのリーダーの考え方であれば、競合となんら変わらなくなる。我が社はお客様の要望はどんなことがあってもお応えする『異常な会社』なんだ! 本当にそれがわかっているのか!この認識がないと今後、我が社は「地獄の道」を歩むことになる。」
360度評価「不可能を可能にしてきた病院」の事例
360度評価とは、通常の評価は上司のみの評価であるのに対して、上司だけでなく、部下、同僚、関連部署まで評価に加わる制度である。上、下、横、斜め上が評価するため、360度評価という。
東京都にある老人病院「青梅慶応病院」。入院するのに3年、4年待ちの患者がいる超人気病院だ。
この病院のサービスは、これまでの病院の常識を覆す、患者やその家族が中心の顧客志向で貫かれている。「サービス業の場合、100−1=99ではなく0だ」と理事長は言う。「100人が関わっていて、99人がいいサービスをしても1人が反対のことをやればお客様は不満になるというのがサービス業の厳しさだ。」青梅慶応病院ではそのマイナス1を排除するため、全員が全員を厳しく評価し合おうというのが「全員評価制度」(いわゆる360度評価)だ。
相互評価表
360度評価実施するために、「相互評価表」を用いている。このやり方が極めて単純な方式だ。縦軸に各所属部署と、そこにいる職員の名前が全部かかれている。横軸は「とても良い」「良い」「普通」「やや悪い」「悪い」「わからない」となっている。この全社員の名前がかいてある相互評価表を半年に 1 回ずつ全員に配る。たとえば、山田花子さんには「とても良い」に丸をつけた人が何名いたか、それを集計する。それでランキングをつくっていく。全然知らない人のことは当然、「わからない」となる。
理事長は言う。「『とても良い』というのは、何がとても良いのか聞かれることが多いのですが、それは何でも良いのです。私はこの人がとても好きだとか、たまたま会ったらきちんご挨拶をしてくれたから「とても良い」とか、あるいはこの前、足を踏んづけられて謝らないで行ってしまったから『悪い』でもいいんです。理由のいかんを問わず、あなたが仲間として見た時に、この人がどういうふうに映るかということです。」
基準も明確でない。ただ、いいいか悪いかだけで、上司でもない同僚にそんなことを評価させても良いのかという疑問がわくが、これが病院サイドの評価と不思議と一致するという。
青梅慶応病院はこの360度評価で査定の8割が決まるそうだ。
徹底した”イズム”の浸透
一見、少し乱暴とも思える同病院の評価システムだが、この背景には徹底した
“イズム”の浸透がある。イズムとは「主義」のことだが、他の病院はどうであれ、「これがウチのやり方だ!」という徹底した経営の意思を伝える「行動指針」の刷り込みが行われている。
具体的なイズムは「職員読本」に記されている。項目としては「この世の楽園」「病院はサービス業」「お客様はいつも正しい」「患者様こそすべてを下さる」「そうそううまい話は」「あなたへの評価」「自分を変える」「タタリを避ける」「輝きが戻ってくる」「何とかします」とさまざまだ。
例)「お客様はいつも正しい」
お客様に言われることはすべて正しい。あらゆる要求に、まず「イエス」「はい」と答えましょう。中には実現困難なこともあります。でも不可能を可能にすることこそ私たちの仕事です。
ただ、一つだけ、それがお客様の利益に反する場合のみ、部署の責任者に相談しましょう。病院の都合、損得など、後で考えれば済むことです。
そうそううまい話は」
当院は、他の病院より10%以上良い待遇(給料・休暇などを目指しています。しかし、世の中そうそううまい話はありません。仕事の大変さは、よそより20%増しだからです。
精神的に肉体的にもなかなかハードです。待遇と大変さの差を10%以上。これは、あなたの奉仕の心で埋めるしかないのです。つまり、奉仕の心のない人には、ここではきついところです。
”真実の瞬間”の目撃者は?
青梅“イズム”にもとづいて全員が厳しくお互いを評価し合う360度評価。理事長の言う『サービスとは「100−1=0」である』という厳しさの認識からの出来た制度だ。
企業の盛衰を左右する最前線のスタッフのわずかな時間の接客態度が企業の成功を左右する。その「真実の瞬間」を見ているのはお客様であると同時に現場のスタッフである。行動指針が徹底されたスタッフは経験やキャリアがなくとも最高の評価者になりえるということだ。社内に“イズム”リーダー(イズムの率先垂範体現者)を発掘・育成できなければ「不可能を可能にする=『異常』であり続ける」ことは出来ないのだろう。
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