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頑張れルーチンワーク職

年功序列型賃金制度から成果主義賃金制度へ移行する際によく使われる枠組みが「等級範囲給制度」だ。 等級範囲給制度とは、仕事の難易度・責任度合いに応じて社員を等級に格付けて賃金を管理する制度である。各等級には上限と下限が設定され、ある等級で賃金が上限(天井)に達するともうそれ以上昇給しない。これは経営者の感覚にはマッチするのでうけがいい。しかし、2:6:2の法則の優秀な上位2割の従業員に青天井に能力を発揮してもらうと同時に、真ん中の6割の従業員にも頑張ってもらわなければならないことも事実であることを考えれば再考の余地のあるケースがある。

等級範囲級制度を導入したA社

A社は食料品卸売販売業、従業員80名。社長は事務職系の賃金と営業職系の賃金の格差があまりないことに不満だった。社長は、配送、在庫管理、事務職の一部を“ルーチンワーク職”と称していた(もちろん従業員にはこれは言っていない)。人件費予算を拡大できない時代に、よく売る営業マンに手厚く処遇するためには、“ルーチンワーク職”の賃金をこれ以上アップすることはできなかった。

そこで、従業員を仕事の難易度・責任度合いに応じて設定した等級を設定し、各従業員を格付けした。

等級には上限と下限があるので、天井に達している従業員は等級アップ(昇格)するしか昇給の道はないことになる。

評価は SABCD の5段階のシステムで相対評価をする。相対評価とはいわゆる偏差値方式で、たとえば、 S は5%、 A は20%、 B は50%、 C は20%、 D は5%でおおよその評価分布を決めるものであった。

従業員の不満

いわゆる“ルーチンワーク職”に従事する従業員を中心に…

「賃金が全くあがらないのは全く評価されていないようだ。自分なりには昨年より成長しているのに…」

「 D 評価はつらい。自分なりに一生懸命やっているのに…」

「評価が良ければ賃金が上るというより、評価が悪ければ賃金が下がるという印象だ」

「職種差別だ!…?」

経営者からすればおおいに反論があるところだ。しかし、多くの従業員がこのように感じている事実がある。

周囲から見たら問題のある従業員なのに、「自分は頑張っている、成果を出している」と履き違えているケースもある。また一方で、ルーチンワークであっても影でコツコツ頑張っている従業員もいる。

評価制度も三現主義

三現主義とは、“現場”で“現物”で“現実”的に事実に基づいて判断するということだ。ルーチンワーク職の言い分は、評価制度以前に「私たちの仕事を本当にわかってくれているのか?」「誰が日常の仕事を見ているのか?」ということにある。半年に1回の評価表1枚で私のことを本当に評価できるのかという不満である。したがって、できるだけ三現主義で事実を確認する姿勢が大切である。

賃金のメッセージ管理

経営者の頭の中には、「この仕事はこの賃金以上は出せない」という上限がある。その上限を表明したものが「等級範囲給制度」だ。しかし、人事賃金制度というものは自動的に運用をすると常に明確な不都合がおこる。それは間違ったメッセージを伝えてしまうことにある。賃金には会社から従業員へのメッセージを伝達する機能がある。会社としては「この仕事はこの賃金以上は出せない」が、従業員には「もうそれほど期待していないので、これ以上頑張らなくて良い」になってしまったりする。

私は職務の難易度ごとに上限を設けることは良いと思うが、人によっては「メッセージを伝える例外」があっていいと思っている。等級の上限に達してもコツコツ頑張っている人は賃金をアップする。それも原則昇給ストップなのであるから、昇給といっても何百円でいい。(これを「張り出し昇給」と言う)

大事なことは、その何百円に込められたメッセージである。メッセージの本質はどのようなメッセージを発したかではなく、相手にどうように伝わっているかである。

上限を決めたのに、上限を上回り賃金を上げるのは、制度上の公平性や納得性に欠けるではないかという反論もあるが、そんなものは従業員のやる気に比べればどうでもいい。

能力主義、成果主義の勢いが強まる今、“ルーチンワーク職”のケアについて検討すべき会社も多いのではないだろうか?彼(彼女)は経営者が知らないところで意外に重要な社内のまとめ役をしていたり、影響力があったりすることもある。「出すものは出せないが頑張ってくれ」という時代だ。目配り、気配り、心配りでカバーする、これが中小企業の強みだと思う。

 

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