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組織風土改革の第一ボタン

我が社にあった成果主義賃金システムを導入したいのでお願いしたい、という依頼をいただいて、「わかりました」といいながら、賃金制度について全く手をつけないことがある(これを利口な不服従と言います‥)。会社の風土、空気を読み取って「経営者、会社、上司、同僚に対する“信頼感”がない」と判断した場合だ。

経営不振のA社

A社は従業員90名のメーカー。2期連続赤字が続いている。昇給はここ3年ゼロ、ここ2年間は賞与もなしだ。社長の要望は「何をやったらどうなるか、いくらもらえるかを明確にしたい」というものだった。つっこんで聞いてみると社員から「評価基準が不明確だ!」「どうやったら賃金がアップするかがわからないからやる気がしない!」という声があがっているらしい。

社長は“評価基準を示す”ことが従業員のやる気を引き出す最も大切な施策と考えていた。「どうやったら賃金が上がるのですか、評価基準を明確にしてほしい」などと突き上げられる会社は間違いなく経営不振に陥っている会社だ。そして、このような会社は評価基準など作っても何の経営改善にもならない。

真因は“信頼感”の欠如

経営不振のときには、「上司が鬼とならねば組織は動かぬ」とか「我が社のミッションはこうだ!ついてこい!」的なことをやりたくなるが、これをやっている限り、一向に経営が好転しない会社をたくさん見てきた。時の経過とともに社長と幹部、社長と従業員のギャップがどんどん広がっていく。

そのような会社は、そもそも“信頼感”が欠如している(場合が多い)。会社に対する信頼感、仲間への信頼感の欠如だ。

信頼感がなくなった組織はまず信頼感をとりもどすことから始めなければ、何をやってもうまくいかない。人が動かない。辞めて欲しくない人が辞める。信頼感の回復は組織風土改革の第一ボタンだ。第一のボタンがしまらないと第二のボタンがしまらない。

まずは母性で信頼感を

子育ての理屈と全く同様で、はじめに母性的なものから教育していかないといけない。1歳までのあいだというのは母親の無条件の愛がとても重要だ。褒める、抱っこするなどで、子供に安心感を与えるというステップを踏む。いきなり、父性的な規律とか倫理とか、人はこうあるべきだ!というようなことを押し付けても絶対にうまくいかない。

会社で言うと、母性的な信頼感がないうちにミッションだとか、ビジョンだ、インセンティブだといって、社長が父性的に檄を飛ばせば飛ばすほど社員はシニカルになってうまくいかない。

これは動物行動学的にサルでも同様だそうだ。まずは母性の愛、母性を与えたあとで父性のルールをあてはめるという。仲間同士でもまずは認める、褒めるから始めないと信頼感は生まれない。

“説明のつかないこと”を改める

会社には説明のつかないこと、従業員に不満を抱かせることが放置されている。これが積もり積もって会社への不信感となる。従業員に不満を抱かせる要因を「衛生要因」と言う。この衛生要因を減少させてもやる気のアップにはつながらないが、逆に言えば、この衛生要因を放置しておくと穴のあいたバケツで水を汲むように、一向に会社は良くならない。

余談だが、12月の冬の賞与がほぼゼロであった会社の社長が、年明けに新品の高級車に乗ってやってきたことがあった。これも、その会社では一時期大きな“衛生要因”となった‥。

成果主義賃金導入!とぶち上げる前に、また、成果主義賃金制度がうまくいかない!という会社は“信頼感”という足元を見詰める必要がある。

論語にも「信無くんば立たず」とある。信用や信頼が何よりも大切だと孔子は教えている。孔子は、「政治とは、食料(食)を十分にし、軍備(兵)を十分にして、人民に信頼(信)を持たせることだ」と述べた。どうしてもやむを得ず捨てなければならないとしたら、この三つのうちどれを先に捨てますか」と尋ねたら、孔子は答える。「まず、軍備を捨てる。その次の食料、食料がなければ人は死ぬが、死は誰にでもある。しかし、信頼感がなくなってしまっては絶対にだめだ」と。

次いで、弊社クライアントの社長様がおっしゃっていたコメント

「会社、苦しくなったら、給料ゼロにして、半年会社に寝泊りして、社員みんなで鍋つついて、しのいだらええですやん。これで耐えれまっせ」

 

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