人事評価表は現場に作らせよう−労務管理は管理職の仕事−
労務とは辞書によれば、「生産性を高めるために労働者の使用の合理化を図る経営者の方策」とある。労務管理は一見、経営者や人事部の仕事のように見えるが、ハッキリ申し上げて“人を切ることの判断”以外は現場の管理職の仕事である。多くの中小企業で、現場の管理職の労務管理意識が薄いために、総務や人事主導でシステムを導入しようとするがそれが機能不全に陥いってしまう。それは現場の管理職は労務管理など自分の仕事ではなく、社長や総務の仕事であると誤解をしているからだ。そこで私は、現場主導の労務管理を実現するために、人事評価表を現場の管理職に作らせることをお勧めしたい。具体的には、1.管理職に、業績を左右する5つの評価項目を考えさせる、2.その評価項目の解説と具体的行動を考えさせる、3.その評価項目の内容と賃金との関係を部下に説明させる 等がある
評価表作りに悩むA社
A社は従業員120名の急成長のビルメンテナンス業。勉強家の社長は、ここ数年来、コンサルタントのセミナーに参加したり、書籍を参考にしながら、人事評価表の作成や制度について試行錯誤を続けていた。試行錯誤を重ねれば重ねるほど、また、真面目にやればやるほど、人事評価の項目がどんどん増えていった。しかし、それに比例して現場からは、不満の声が大きくなる。「何が評価されているかわからない」「好き嫌いで評価されている」「上司の説明は何が言いたいのかわからない」などである。社長の悩みの種は、部課長が人事評価に関心を持っていないことであった。それを懸念して手取り足取りで評価方法や面接をやり方を記載したマニュアルを作成してみたが、どうもうまくいかない。あげくの果てに、管理職の一人が「部下が不公平感を持たない誰でも納得できる評価制度をもう一度、会社で作って下さい」と直言してきた。社長も専門の人事コンサルタントに依頼して作成する時期が来たかもしれないと考え始めた。
5つの評価項目を管理職に作らせよう
中小企業の場合、大企業のような“人事部”がない。総務がサポートはできるが、毎年のメンテナンス、改善を含め現場の管理職が作る他ないのだ。コンサルタント会社で作った人事制度はそのメンテナンスが自社では出来ないので中小企業では使い物にならない。一方、現場からは「専門家ではないから評価表作りなどできない」「そんな暇はない、それは総務でやってくれ」などクレームは出る。しかし、評価表の内容作りは、社長や総務の仕事ではなく、ラインの管理職の仕事なのだ。「誰もが納得できる評価制度」は社長や人事コンサルタントから与えられるのではなく、現場の管理職が指導能力・説明能力を磨きながら、自ら努力して作っていくものだ。それを履き違えると会社はおかしくなる。評価表作りはそれほど難しいことではない。その項目はアレもコレもではなく、会社の業績に直結する項目に絞れば良い。それも5つだ。3つでも少ない。10も20にもなると頭に残らない。たとえば、製造業(一般職)の場合、会社の業績に貢献する項目とは以下の例のようになるのではなかろうか。
職務能力・技術力
不良率低減
5S
工数削減
勤務姿勢・チームワーク
「職務能力・技術力」は難しい仕事ができるかどうか、多能工化しているかどうかだ。「不良率低減」は決められたルールを守らず不良品を出していないかや凡ミスが多くないか、「5S」は会社の5S活動に積極的に参加しているかなどだ。「工数削減」とは、無駄な残業はないかや生産性を向上させているかなどとなり、「勤務姿勢・チームワーク」は、常に前向きかどうかや協調性があるかどうかなどとなる。その各項目の解説や具体的な行動を管理職が自ら考え、ガイドラインとして人事評価表に記載する。レベルが上がってくれば、各項目における各自の半期ごとの個人別の具体的目標を明記すると良い。
自分で作るから魂が入るし、部下に伝わる
従来の人事評価表の作成は、社長や総務主導なので管理職がその評価表を説明するときにパワーが出なかった。部下はその上司の言葉の“言力”や“言質”からその実態を見抜いている。評価項目は賃金を決めるモノサシではなく、経営の意志を伝えるツールである。評価制度はコミュニケーションルールである。そのツールの使い勝手が悪ければ現場でどんどん継続的に改善させなければならない。管理職が伝えたいことをどんどん5つの評価項目の解説部分に盛り込めば良い。
賃金の原則を管理職が部下に説明できるようにする
評価結果は賃金に反映させないといけない、これは常識である。しかし、反映できないケースもある。「どうして僕の給料は上がらないんですか?こんなに頑張っているのに‥」という部下からの質問に対して、「そんなんもん知るか!上で決めたことなんだから!」とか「そうだよなー、俺もそう思う」と返答する管理職が余りにも多い。何を同調しているのかー!。これは会社批判と同様の「背反行為」であり「降格事由」だ。ここで管理職は賃金の原則を説明できるようになっておかなければならない。説明しなければならない原則は4つだ。
(原則その1)今は経済縮小時代である:売上・粗利がアップしないと人件費枠が増やせない。これは当たり前のことだが、まだ給料は毎年上がるものと思っている人が少なからずいるので再度徹底したい。今は低成長デフレ時代であり、高度成長インフレ時代ではないのだ。
(原則その2)仕事のレベルが上がっていないと賃金は上がらない:昨年と比較して今の仕事のレベルが上がっていないと賃金は上がらないのだ。賃金は仕事のレベル、会社に対する貢献度に対して支払われるものである。多くの場合、その仕事のレベル、能力の発揮度合いは昨年と変わらないから賃金は上げられない。
(原則その3)評価は賃金の絶対額で見る:昇給ゼロ=評価ゼロではないのだ。その仕事や社内格付けに相応しい賃金が既に支給されていれば、昇給ゼロは当り前だ。
(原則その4)ガンバリは賞与に反映させる:「頑張っても頑張らなくても賃金は変わらないのか!じゃあ頑張らない」と解釈されても困る。そこ前述の評価表や目標管理で、キッチリと査定し賞与に反映させることだ。
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