税制適格年金の解約は急ぐな
現在の退職金の積立て制度の一つである「税制適格年金制度」(以下、適年という)は、2012 年3月に廃止が決まっています。あと7年足らずでこの制度を活用している企業はなんらかの対応に せまられるわけです。対応というのは、その積立金をどの制度に移行するかを決めて、今後の退職金 制度そのものをどうするかを設計することです。この1年?2年は、その積立金の移行先や運用方法 の設計に関して、生保会社、損保会社、銀行等の金融機関の売り込みはさらに過熱してくると思われ ます。金融機関は実際に「カネ」が動かなければビジネスにならないので、なんとか現在の適年を解 約する方向へ持っていき、自らの商品で運用してもらいたいのがホンネです。しかし、退職金コンサ ルの現場では、12社に1社ぐらいは今すぐの適年解約は控えたほうがいい会社があります。つまり、制 度廃止までの7年という時間を味方につけながら、段階をふんで処理していくというものです。
401Kが先にありきの金融機関コンサル
今年になって、金融機関及びそれに付随するコンサル会社は大企業の適年コンサルを終えて、401Kの売り込みを中心とした中小企業へコンサル営業を開始しています。私は公的年金制度が崩壊しつつある今、マクロレベルでみると、企業と個人の自助努力を理念とする401Kが普及することは大変望ましいことだと思っています。しかし、生き残りをかけた中小企業の労務の現場は、「労務管理において有効か」という視点のみが最優先されるのです。具体的には「優秀な人材の獲得」と「優秀な人材の引きとめ」に有効かという視点です。今の給料、今の賞与の底上げが難しい時代に、60歳以降の年金でしかもらえない401Kという制度が労務管理においてどこまで有効かははなはだ疑問です。退職金や401Kというのはあくまで労務管理、人事マネジメントの手段の一部です。手段の一部である401Kを売り込みにくる金融機関コンサルは、中小企業の労務の現場を熟知しているようには思えません。商品が先にありきだと、自分の商品のメリットを強調し、他の商品のデメリットを強調することに終始することになります。中小企業に真に有効な提案をしてもらえるかーそれが心配です。
この10年の乗り切り策
退職金問題というのは今後10年以内で定年退職する、団塊世代の積立金不足問題といっても過言ではありません。したがって、多くの企業は今後退職金をどう設計するか?というよりも、この10年間、とうやってしのぐか?が重要なわけです。退職金を払うために銀行から借り入れができる時代ではありません。以下の要件を満たす会社は解約を少し控えたほうが良いかもしれません。
ここ5、6年以内で出る大物定年退職者(1,000円以上の退職金受給者)がいる
上記以外の者と他の従業員で年齢格差がある(他は比較的若い)
勤続30年勤務の部長で1,000円程度の退職金規程である(それほど高いものではない)。
税制適格年金制度が定年時のみ支給されるものである。
この方法をとれば、退職金1,000万円以上の大物受給者の退職金は全額、適年(つまり生保)のほうから支給されるので、資金繰りに困ることはありません(だだし、退職金規程のカバー率が100%の場合に限る)。また、積み立て不足の影響で、大物が退職する向こう5、6年で適金のお財布がほとんどカラになるのです。カラになってきたらそこで解約をしても解約返戻金は小額ですから、従業員の一時所得の負担を軽減できます。このような方策は、年齢構成がいびつな中小企業ならではのものです。
上記のような会社では、定年退職以外の退職者に対して退職金制度を独自で持っていることが多い。この独自部分は、税制適格年金の「給付の減額の制限」にはひっかかりません。ですから、この独自部分については、早急に時代にマッチしたものに変えてしまうことです。
単なる優柔不断の先送りは危険
自社の状況、今後10年間の退職金シュミレーションを行い、「今動かず、この時期に動こう」という「積極的な先送り」は大いにお勧めします。しかし、残念ながらk、10社に1社は、誰も体を張って退職金改革を進めようとしない会社があります。私はもう5年前から税制適格年金と厚生年金基金の問題解決をやってきました。さすがに昨今は退職金改革を経営課題と位置づけて多くの企業が取り組んで下さるようになりましたが、ビックリするくらいのん気な企業もまだ見受けられます。どのうような会社も「早く手を打つ」ことではなく、税制適格年金廃止までのあと7年足らずの間に、自社はどのように舵取りしていくかの「方針」をたてることが何よりも重要です。早く方針をたてれば、打てる手も広がってくるのです。
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