正社員との賃金差別で訴えられる
昨今は人件費削減のために、正社員が退職した後には、契約従業員、パートタイマー、派遣社員などの「非正社員」で穴埋めしているようです。しかし、その労働実態を見ますと、フルタイム勤務が普通で周囲の正社員の仕事内容とまったく変わりません。正社員との違いは、時間給、賞与なし、退職金なしという処遇格差のみです。法的には正当な理由がないにもかかわらず正社員と賃金差別をしていると訴えられてしまいます。また、正社員と同様の仕事しているのに、賃金が低いパートタイマーの不満はますます募るばかりではないでしょうかー。そこで私は、正社員とパートタイマーで労働時間格差を設けるか、正社員とパートタイマーの垣根を取り払うか、のどちらかを徹底することを提案したい。
一致団結ができない営業所
A社は従業員250名の卸売営業会社。近畿一円に営業所を持っています。そのうちB営業所は正社員5名、非正社員(契約従業員・パートタイマー)が6名で構成されています。近年、業績が芳しくなく正社員の欠員補充はすべて50代の契約従業員やパートタイマーで行ってきました。ここ最近は、正社員と非正社員の数の逆転現象が起きつつあります。非正社員は1年契約、月給17万円程度で、賞与なし、退職金なしという処遇です。このB営業所で困った問題が起きていました。若い営業所長がいくら営業所の目標達成のために一致団結の行動を求めても、「そんなことは正社員の仕事だ」「私達はそこまでするような賃金をもらっていない」「数字を上げても上げなくて処遇が変わらない」「営業所長のリーダーシップがない」など非正社員から突き上げを食らっていました。30代前半の営業所長が社会経験豊富な50代の非正社員になめられているのです。そんなある日、4年勤務していた契約従業員Cさん(54歳)が退職金の請求をめぐって訴えを起こしました。「正社員と同様の労働条件で勤務していたにもかかわらず、賃金は低く抑えられ、賞与はなく、おまけに退職金もなしというのは納得がいかない。退職金だけでも請求する」という内容のものでした。
正社員との賃金差別は許さない(丸子警報機事件)
平成8年長野地方裁判所はとても怖い判決を出しました。自動車用警報器を製造販売する会社に、期間2ヵ月の雇用契約を更新する形で長期雇用されてきた女子パート28名が、女子正社員と同じ作業に従事し、勤務時間、勤務日数のほかQCサークルへの取り組みも同じであるにもかかわらず、女子正社員に比べて賃金が低いのは不当であると主張し、同じ勤務年数の女子社員に対して払うであろう賃金との差額を払え、と訴えました。これに対して長野地裁は「パート従業員に対する著しい賃金差別は公序良俗に反する」と原告側の主張を認め、同じ勤務年数の女子正社員の8割まで賃金差額(1466万円)の支払いを命じました。
中小企業において、労働法的な側面、従業員の感情的側面を考慮すると大きくは2つの対策のいずれかとなると思われます。中途半端な対応が一番ダメです。
(対策その1):時間を少しでも短くする
中小企業では、正社員とパートがまったく同じ仕事、同じ時間勤務をしているケースが多い。正社員とパートというように名称や形式的なもので差をつけることでお茶を濁しているのが一般的です。しかし、労働法はすべて労働実態でみられます。労働実態とは、仕事内容であり、労働時間です。仕事内容を明確に区分するのが難しい中小企業では、少なくとも労働時間で差をつけるしかありません。1日の労働時間で難しければ休日を増やすことです。
(対策その2):年収に上限を設ける正社員にする
この対策の発想は逆で、差をつけることが難しければ処遇も低い水準で同じにするというものです。ときどき見られるのは、パートとして採用しておきながら、その労働時間が自然と長くなり、正社員なみの人件費を支払っている会社です。業種や業態にもよりますが、年収400?500万円の正社員と年収130万円のパートという構成ではなく、年収250万円の「安い正社員」を多数雇用するというモデルをめざそうというものです。賞与も決算賞与は支給します。退職金は会社都合と定年だけ支給するようにします(積立がいらない退職金制度)。当然、正社員ですから、年収が300万円、400万円、500万円、600万円‥‥になる道筋(賃金制度)の整備も不可欠です。
パートタイマーはシラけている?
パートタイマーに正社員以上の仕事をしてもらいたいー企業はすべてそう思います。しかし、同じフロアー、工場で働く正社員とあまりに待遇が違うということがわかるとやる気は一気に失せてしまいます。その部署の上長が部下の心を一つにして目標に向かわせることは困難を極めるようです。「正社員もパートも同じ従業員だ!」といってパートへの要求をどんどん高めていくのは会社の一方的な都合の押し付けです。出すものは出せないが頑張ってもらうためにはもっと一人ひとりの都合を考えた仕組みづくりに気を配るべきです。
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