上げやすく下げやすい賃金体系をつくろう
労使間でトラブルが多いのは、賃金の問題です。社長の立場から言えば、「頑張って成果を出してくれれば賃金を上げるが、仕事の成果が出なければ下げることもある」と言いたいわけです。特に賃金の高い人がその既得権にあぐらをかくことを絶対に許したくはありません。「課長として抜擢したが、思うような成果を上げれず降格した人」、「営業成績が上がらず、配置転換して物流部門の倉庫担当にしたベテラン従業員」などに対しては、数万円の賃金減額をしたいものです。そのような減額見直しができる賃金体系にしておく必要があります。具体的には、基本給に上限を設ける、役職手当を手厚くする、ことで上げやすく、下げやすい賃金体系を提案したい。
基本給はカチカチの固定給となる
基本給というのは、その名称からして従業員にとってはとても重要な賃金です。基本給のアップダウンにはとても神経質なのです。基本給の減額はモラールに大きく影響します。また、法的にも基本給を減額するには相当高度な合理性が要求されます。一度上げた基本給はなかなか減額しにくいわけです。基本給連動型の退職金制度を持っている会社であればなおさらです。
賃金減額3つの理由
賃金の減額には大きく3つの理由があります。その理由は以下のとおりです。
1.役職を解任する降格
これは課長や部長を解任され、その職責を解かれたために賃金減額となるケースです。
「企業において‥‥その従業員中の誰を管理者たる地位に就け、またはその地位にあった者を何らかの理由(業績不振・業務不適格等を含む)において更迭することは、その企業の使用者の人事権の裁量的行為である」(H3.3.14神戸地裁、星電社事件判決ほか)とあるように、いわゆる自由裁量として、裁判所はこのような賃金減額は比較的寛容なのです。
2.懲戒処分としての降格
これは一般に懲戒処分として、その罰則として給料減額を一定期間、一定率行うものです。
「一般に懲戒処分を行うためには、その根拠として就業規則においてその要件及び効果が定められていることが必要である」(H9.7.15仙台地裁、東北福祉大事件判決)とされています。
3.等級や格付けの見直しの降格
これは等級や格付けの見直しによって、賃金減額となるケースです。
「使用者が従業員の職能資格や等級を見直し、能力以上に格付けされていると認められる者の資格・等級を一方的に引き下げる措置を実施するにあたっては、就業規則等における職能資格制度の定めにおいて、資格等級の見直しにより降格・降給の可能性が予定され、使用者にその権限が根拠付けられていることが必要である」(H8.12.11東京地裁、アーク証券事件決定)
役職者への昇格・降格は会社の人事権
裁判所が要求するのは、「高度の合理性」です。これに必要なことは、「下がる根拠が書いた書面」です。それは、「就業規則(賃金規程)上の明確な根拠」と「それに相当する理由」が書面により後で立証できるということです。
しかし、中小企業では人事制度の運用がしっかりと行われ、その根拠をキッチリと書面で整備することは難しいと思います。中小企業においては、その合理性の立証という観点から、訴えられると誠に危ういケースが多いのです。
以上のことから、中小企業においては、「企業の人事権の裁量行為であると認めらやすい役職者への昇格・降格により役職手当のつけ外しを行う」のが最も運用しやすいことがわかります。つまり、基本給は一定額で押えながら、ソコソコの役職手当を用意し、役職者になることで、ドンと役職手当分が増える、賞与の算定においても「基本給+役職手当」を算定基礎給にすれば、ドンと年収ベースでも上がります。その逆で降格となれば、役職手当がとれて、賞与の支給額も減額され、年収ベースはドンと下がります。時代のスピードに合わせて、合法的に昇格・降格がテンポ良く実施できる―これがこれからの賃金管理の要諦です。
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