これではダメだ!年収は高いが不安定なA社の賃金
A社は従業員50名の呉服販売業。業界は“斜陽業界”と位置づけられ、マーケットはどんどん縮 小しています。危機感をいだいた3代目のB社長はここ2年間で、退職金制度を廃止し、人件費を変 動費化するために「業績連動型の賃金体系」を作り上げました。労働分配率(人件費÷粗利)を33 %と決めており、月額の固定給は年齢を問わず16万円?20万円でした。
B社長が深刻な面持ちで、ご相談に来られたのは、将来の幹部候補として嘱望していた、20代の 従業員2名と30代前半の従業員1名の突然の退職がきっかけでした。
勉強家のB社長は、自社の賃金体系がどれほど素晴らしいかを力説し、業界組合が出している年収 統計を持ち出し、それよりもはるかに自社賃金が上回っていることも強調されました。
退職したCさん(28歳)の2004年の賃金は以下のようなものでした。
月例賃金:19万円×12 =228万円
業績賞与:100万円+120万円=220万円
決算賞与: 50万円 合計498万円
賃金構造基本統計調査 京都府 中小企業(従業員10名〜99名)の28歳の年収平均は、残業 代と通勤手当を除いて「296万3200円」となっています。この水準からすると、一営業マンで
あるCさんの年収水準は大変高額といえます。
しかし、Cさんが退職時に漏らしたホンネは以下のようのものでした。「業界の将来が暗い」「今はいいが、家族を養っていくには不安がある」「数字をあげるための長時 間労働に耐えられなくなった‥」などなどでした。
A社の事例から学ぶ
(その1)従業員は安定して生活していきたい
従業員がホンネで望んでいるのは「安定した生活を送りたい」です。たとえ、賃金水準が一時的に 高くても、来年はその半分になる可能性があれば不安でたまりません。「ジェットコースター」には
乗りたくないのです。少なくとも月例賃金は生活の安定を保証する水準でなければなりません。Cさ んのように28歳で扶養家族がいるのに固定給が19万円はやはりダメでしょう。
(その2)極端な成果主義(結果主義)は疲れ果てる
A社のような賃金体系では、今後同様の退職者が発生します。数字が上がらない人も退職していき ますが、むしろ、数字を上げる有能な人が退職するはずです。それは、一度上がった年収レベルを維
持するため、また、会社の期待に応えるためにはさらに成果を追い求め続けなくてはいけないからで す。そのような上昇志向があり、ハングリー精神を持ち続けられる人がどれだけいるでしょうかー。
普通はその仕事のやり方に疲れ果ててしまい、一度リセット(退職)したくなるのです。
(その3)社長は明るい将来を描いて逆算して手を打つ
私は、B社長が業界に対して不安を持っており、売上もジリ貧だと決めつけておられるようにお見 受けしました。その不安は痛いほどわかりました。その心持ちは全従業員に伝わっていることは間違
いありません。その消極的な経営姿勢が上記のような極端な歩合要素を含んだ賃金体系として現れた のです。しかし、“業績は経営者が決めるもの”です。「今はこうだが、将来こうしたい」と決める
のです。そのうえで、その志・ビジョンを実現するための人事・労務・賃金はいかにあるべきか、を 真剣に問うのです。あるべき姿(ゴール)から逆算してありとあらゆる手を打つのです。命がけでや
ってみて、ダメなら仕方がないではないですかー、それが経営の覚悟ではないでしょうか。
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