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福田秀樹の多事争論

栄養ドリンクのテレビCM

昔、「24時間たたかえますか~、ビジネスマ~ン、ビジネスマ~ン、ジャパニ~ズ、ビジネスマ~ン~」という栄養ドリンクのテレビCMが流れていたのを覚えておられるでしょうか。年配のビジネスマンからは、「最近の若いもんは(軟弱だ)!オレたちの頃はもっともっと働いていたぞ!徹夜もバリバリこなしたもんだ!」という声が聞かれることがあります。しかし、これらは昭和から平成一桁の時代だからこそ許された論調です。このようなテレビCMを今、流すとどうなるか?考えただけでも恐ろしいです。

 

昭和から平成一桁あたりまで、実際に所定労働時間や残業を含めた実労働時間は今よりも長かったといえます。しかし、注意すべきはその時代と今の時代とは「労働の質」が違うということです。IT技術が発達し、アナログから多くのものがデジタルになり、仕事のスピードは格段に速く・正確になりました。また、仕事のスピードだけでなく、時代の変化のスピードも昭和の時代と今とは比べものになりません。コンビニの棚の品揃えも短期間でガラッと変わるなどドッグイヤーの様相は加速度を増しています。

また、昨今、若い新人でも早期に一人前としての仕事を要求される傾向があります。昭和の時代はもっと時間がゆっくり流れ、育てるゆとりがあったはずです。今では、たとえば、飲食・小売りなどの店舗産業では半年で店長を、ソフト開発業では入社1年でリーダーを、製造業では入社3年でデジタル化された工作機器使い、ベテランと同様のモノ作りができてしまう、などです。

企業は環境適応業ですから、市場のスピード・ニーズに応えながら、労働の質や心的負荷の変化をコントロールすることは難しいといえます。したがって、心的負荷による健康障害を防止するという観点からは、労働の質をコントロールするかわりに、「労働時間」をコントロールしていくしかないのです。

しかし、理屈ではわかっても経営者の皆さまからは次のような悲鳴に似た声が聞こえてきます。一つには、ソフト化・サービス化時代においては、感じる力・思う力・創造する力が益々重要になります。つまり、知恵やセンスをお金に変える裁量的な業務が増加し、労働時間とアウトプットが比例しないのです。だから、ときに生産性が低ければたくさん働いてカバーする、ということになりかねません。

また一つには、中小・零細企業の多くは、特段の差別化要素がない限り、立場の弱い受注ビジネスです。「明日までに持ってきて」と言われ、「労働時間が長くなり、負荷が強くなるので、できません」と断ってしまえば、「それなら結構です(アンタのところにはもう頼まない)!」となって、もう受注が来ない。多品種・小ロット・短納期のニーズに反すれば、その先はない(かもしれない)、このプレッシャーが長時間労働に拍車をかけています。

しかしながら、このような背景があるからこそ、過重労働による健康障害を防ぐためには、労働時間をしっかりと管理する、従業員の健康に十分配慮するという発想を経営者は持たざるを得ない世の中になっています。たとえ、給与をたくさん払っていても、長時間労働が蔓延する会社は「ブラック企業だ!」(若者を使い捨てにする搾取型のけしからん会社だ!)として烙印を押されてしまうのです。

最近つくづく考えることがあります。すっかり成熟してしまった日本では「長時間労働を強みとしたビジネスは儲からないし、拡大しない」ということです。これは、常に会社の立場で生き残りをかけて悪戦苦闘している労務コンサルタントの率直な感想です。

 

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