利益が吹き飛ぶ!労務の簿外債務はありませんか?
M&A案件で、買収企業等のデューデリジェンス(事前詳細調査)のサポートをさせて戴くことがあります。
労務関係で代表的な簿外債務として、
①未消化の年次有給休暇
②サービス残業代(過去2年間)
③パート社員等の社会保険未加入(過去2年間)
④厚生年金基金加入の場合の不足金割当額
⑤退職金の積み立て不足額
⑥余剰人員の人員整理等の必要性
などがあります。
損害賠償等係争案件、保証債務、金融デリバティブ、解約不能のリース契約などは比較的すぐにわかりますが、労務の簿外債務は意外の見落とされてしまう例に複数遭遇しています。上記(⑤を除く)を勘案すると、買収金額はもっと下がると思われる事案です。
先日、ご相談に来られたA社(社員数80名、パート350名の卸売・小売業)の社長様は「今年は利益が出て税金対策で困るわ~!」と誇らしげにお話されましたが、少なくとも上記の簿外債務の①~⑤まですべてバッチリ保持されており、簿外債務の引き当てを行ったとしたら、会計上利益など一切残らないことが30分の面談で判明し、社長様の表情が変わってしまいました。
また、数年前、関与したM&A案件では厚生年金基金の不足金が数億円あったため、当該案件がストップしたこともあります。
労務に限らず、その税務上算出された「利益」は企業の本当の実力を示した数字なのか?これを会計的に見てみるべきです。
やれベースアップだ、賃上げだと世間は騒いでいますが、労務の簿外債務をしっかり認識し、いつ、どのように、償却処理していくのか明確にしておく、まず足下を固めておくことが必要なのです。
カテゴリ名:その他社長のためのQ&A (2014/03/31 掲載)