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福田秀樹のWEBコンサルティング会社を守る労働法務対策

Q

残業割増ではなく残業"割引"賃金を支給したいのですが?

A

あるセミナーでこのような質問がでました。

「当社は残業代を"2割引き"で支給しています。たとえば、時間給が1000円の人なら、1日8時間、1週40時間を超えたら、残業単価が800円になります。違法かと思いますが何か良い方法はないですか?」

 

とても若い経営者からの質問でした。

 

労務士としての回答は、

「法律的に貴社のやり方はホームベース、4メートル手前のアウトです」

 

でも、経営者としての回答は

「ホー、おもしろいことをしてますね~」なのです。

 

そもそも、労働基準法上の割増賃金は「罰則金」なのです。割増賃金という罰則金を払うことを嫌がる経営者が残業そのものを減らすことを期待した立法趣旨になっています。

 

海外では割増賃金のことを「ペナルティーレート」といっています。つまり、「残業させたことへの罰金」と言っているわけです。平成28年4月には労働基準法の改正がなされる予定で、内容は月間60時間超の残業は1.5倍の賃金になるといものです。つまり、「月間60時間超の残業は絶対ダメですよ」というメッセージです。

 

しかし、賃金を支給する経営者の頭の中は、賃金と能率(労働生産性)は一致していなければならない、つまり、残業をしたらその分、能率は落ちるのだから、賃金は通常の単価より少なくなっても仕方ないという合理性の観点でモノを考えます。

 

また、割増賃金がもらえるとしたら、仕事をダラダラとやって、無駄な残業代を稼ぐ、いわゆる経済学上の"モラルハザード"が起こるという心配もあります。

 

しかし、上記の会社が固定残業手当を合法的に支給していたとしたら、法的にOKとなる可能性があります。話を簡単にするために、以下の前提をおきます。

 

月給                        170000円

固定残業手当      20000円

固定給計        190000円

月間平均所定労働時間   170時間

 

この場合、法定の残業単価は1000円×1.25倍=1250円です。

仮に30時間の残業をしたとたら、1250円×30時間=37500円―(1)

 

固定残業手当は20000円ですから、超過分は17500円で、この超過した分はその都度支払うということです。

 

質問会社のように、通常の割増賃金とは区別し「超過勤務手当」として、残業1時間につき800円を支給したとします。月間30時間の残業なら、単価800円×30時間=24000円を支給することになります。つまり、当該会社が支給している残業代は20000円(固定残業手当)+24000円(超過勤務手当)=44000円-(2)です。

 

結論として、(1)<(2) 

実際の残業代支給額(2)が法定の割増賃金(1)を上回っていれば法違反ではないといえます。

 

しかし、これだけではダメで、どのくらいの残業時間で法定の割増賃金と逆転するのかを知って管理する必要があります

 

上記の例では  20000+800*X=1250*X

 

方程式を解けば、X=44.44・・・時間となります。

 

つまり、"割引"賃金を支払うためには、少なくとも以下の要件を満たさなければ話にならないといえます。

 (その1) 

固定残業手当(上記例では20000円)が支給されていれば、月間残業時間が44時間までは800円(超過勤務手当)であるが、44時間を超えれば、1250円(法定残業単価)を支払うというルールが確立されていること。

(その2)

実際に適正に労働時間が管理され、当該超えた分につき超えた労働時間(44時間超の時間)×1250円が支払われていること。

(その3)

固定残業手当の支給及び上記の支払い方法が就業規則・雇用契約書で労使合意がされていること。

 

 

 

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