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福田秀樹のWEBコンサルティング人事評価と給与制度づくり

Q

マタハラ最高裁判決から学ぶ!イマドキの労務管理のポイント

A

平成26年10月23日「最高裁 妊娠を理由に降格=違法」という報道がなされ、これだけ聞くと、「当たり前であって、そんなことわざわざ最高裁で争われることはないだろう」と思われた方が多いと思います。 しかし、この問題は企業が女性のライフイベントなどの多様性を受け入れ、いかにやる気と能力のある社員を定着させ、キャリアを円滑につないでいくかという企業の労務政策の問題であると考えています。

 

(どんな争いか?)

訴えを起こしたAさんはB病院の理学療法士として勤務していた。Aさんは妊娠を理由に軽易な業務への転換を請求した。病院はAさんの申し出を受けて訪問リハビリの部門から病院リハビリに配転した。その際に「副主任(手当9,500円)」の職を解いた。職場復帰後もその役職は解かれたままであった。理由は既に別の理学療法士が副主任についていたからだ。別の職場でも受入れ先がなく、副主任のポジションがなかったため、副主任としては再昇格できない事情があったという。

 

B病院の言い分は、「軽易な業務への転換の一環として、副主任の職を解いた。本人もこれに同意していたでしょ」というものだ。

 

一方、Aさんの言い分は、「軽易な業務への転換は申し出たけど、副主任のまま置いておいて欲しかった。副主任の降格は同意していない。だって、「副主任」の仕事は妊娠していてもできるんです。10年目でやっと副主任になったのに! これではキャリアが台無しになる。これは妊娠を理由とした「降格」だ!!!!

 

(どのような職務を命じるかは病院側の自由)

「妊娠を理由に本人の同意のない降格」は違法というのは、もし、妊娠や育児等で管理職の職務が果たせないと判断したら、企業側はその職務を解き、別の者を任命する以外に企業運営を円滑にする手段はないのですから、筋の通らない話に聞こえます。

 

しかし、問題は副主任の仕事内容です。もし、「副主任」の仕事が妊娠中又は小さなお子さんの育児中の女性にはともて務まらないほどハードな職務内容が定義され、運用されていたら、おそらくこんな問題にはなっていません。

 

最高裁は「主任又は副主任の管理職としての職務内容が実質判然としない」と言っていますが、米国のように職務記述書がない日本では、そんな具体的に「副主任(役職手当9,500円)」の仕事が明確に定義されているなどありえません。

 

「管理職務規定」がB病院でも定められています。管理者の範囲は、部長、科長、課長、師長、医長、主任又は副主任の職位にある者とされています。しかし、多くの病院の規程類を拝見する立場にありますが、それぞれの職務内容を記述し、かつそれが現場で運用されている病院など見たことがありません。つまり、そもそも管理職(ここでは副主任)の仕事が不明瞭なのです。

 

降格にも2種類あります。

  1. 降格=社内資格(社内の身分・ランク)が下がる

       →職務内容は必ずしも変わらない(本人に対する評価は変わっている)

       →いわゆる本人への評価のディスカウント

  2. 降格(降職)=職位が変わる

       →職務内容は必ず変わる(管理スパンが狭くなり原則負荷が下がる)

       →その職務内容がこなせるか、こなせないか

       →こなせなかったから、降職(役職を解く)となる

      

この副主任という役職は必ずしも職制上のものではなく、心理的には病院における身分(つまり社内格付けランク、ステップアップの階段)の要素が大きいのではないか、ということです。仕事としても、判決文にも出ているように「みんなのとりまとめ」的な曖昧な表現にとどまっています。副主任とは結局「職場のしっかり者」と言ったところでしょうか。

この降格が社内ランクの格下げであれば、当然妊娠を理由とした社内ランクの降格はおかしい、という理屈は成り立つのです。

 

(女性のライフイベントによって踊り場をつくる制度)

つまり、物事の本質は妊娠を理由にその人をディスカウントした(評価を下げた)、排除した(ととられた)ことだと思います

もちろん、Aさんは副主任として仕事をしたいと主張しながら、ほぼ1年間バッチリ育児休業をとっていたり(現実は責任感のある人は早めに復帰する)、Aさんが副主任となるのであれば辞めます、という他2名の理学療法士がいたりして、Aさん自身が空気の読めない、権利主張の強い人であったのかもしれません。

 しかし、企業の労務管理として考えておくべきことは、男性を中心とした一方通行で単線のキャリアではなく、個人の選択により「多様性」を認める制度をつくっていくことが求められています。

 

  1. 妊娠・出産でバリバリコースから、いったん外れて下に戻れるような制度

  2. 病気で体調を崩したので、バリバリコースからホドホドコースへ期間限定で行ける制度

  3. 40前後の女性で不妊治療に専念したいので、短時間正社員として勤務する制度

  4. 親の介護で転勤ができない人もなんとかキャリアをつなげる制度

 

若年労働力不足、超少子高齢化時代において、このようなセンスを持った企業が人材獲得競争に勝ち残って行けると考えています。一方で妊娠・出産でその職務(職位の仕事)がまともに果たせない場合、バッサリと降格(降職)するのは当たり前ということです。

 

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