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福田秀樹のWEBコンサルティング会社を守る労働法務対策

Q

会社を守る就業規則はなぜ会社を守れないのか?

A

(「会社を守る就業規則」を作ったら安心が一番危険)

「鉄壁の就業規則」「会社を守る就業規則」を謳い文句に営業に熱心な社労士さんがおられます。しかし、就業規則は労働基準法上、会社が義務として整備を義務付けられているもので、決して会社を守るという趣旨のドキュメントではないのです。どちらかというと、労働者を守るためのものですね。

 

この前、ある社労士さんが作られた「会社を守る就業規則」というものを拝見しました。とても立派な就業規則(ファイルで2冊程度)です。たまたまご相談にみえたY社に見せて戴いたのです。日付は平成18年4月1日となっていて、作って運用されている形跡は一切ありません。周知はもちろんされておらず、労基署への届け出はなんとかされていたようです。

 

社長いわく、「当時セミナーに参加し、それなりの費用を払ってコンサルティングを受けて作ったが、当時の状況は異なっており、実情には合っていない」とのこと。

 

私の推測ですが、それなりのお金と労力を一時的に「会社を守る就業規則」作成に費やし、「これで会社を守れる!」と、そこで安心感を得られ、関心が他へ向いてしまったのでしょう・・。

 

でも、そんなに甘くないです。このような状況が一番危険です。

 

(実情と異なる就業規則が招く悲劇)

Y社は社内で労働組合が出来て、その対応で困っておられる会社でした。就業規則には1日7時間30分と記載があります。しかし、実情は1日8時間だとおっしゃいます。2年前、社長の鶴の一声で、1日8時間にしたとのこと・・・。

 

これは労働条件の不利益変更の問題で本来、ややこしいのですが、このように就業規則の変更がなされていない労働条件の不利益変更は、ホームベース3メートル手前でアウトです。残念ながら、社員全員に1日30分の時間外手当を直ちに遡及して支払うことになります。

 

(実情に合わせた「メンテナンス」と「運用」が肝)

Y社の事例は極端ですが、たとえば、ある年に家族手当を廃止し、基本給に組み込んだとしても、就業規則を変えておらず、変更の経緯を知らない新入社員から「家族手当」を請求されたケースもあります。また、誰に、どの就業規則が適用されているのかが曖昧で、60歳以降に入社した嘱託社員に退職金を請求されたケースもあります。

 

このように作ったら、作ったで、実情に応じたメンテナンスや運用をしていないと、会社を守れるはずの就業規則が逆に「会社のお荷物」になってしまうということです。

 

(就業規則に会社を守るという効果を期待するな)

就業規則は会社を守るツールとして有効か、と言われれば、有効となりえることもあります。しかし、逆に一切(裁判官に)無視されることもあり、会社に不利なところだけを(裁判官に)着眼されてしまうことも多々あります。また、会社に一方的に有利な条項は、裁判官の「常識」に従い、変更されてしまいます。

 

したがって、経営者は就業規則に過度の期待はせずに、就業規則と矛盾のない、適正な労務管理が日常的に運用されているかが重要であるとの認識を持って戴きたいのです。

 

その他、就業規則の誤解をあげてみした。

 

○服務規律、懲戒規定がなければ懲戒処分が認められない

 →常識的なことは裁判所も認めてくれる。

○就業規則は会社の裁量で作成できるので、できるだけ会社に有利な条項を盛り込むべき

 →会社が一方的に作れるからこそ、裁判所は懐疑的にみる

○就業規則はナイよりあったようがよい

 →ズサンなひな形で作成されたものはナイほうがマシ

○就業規則の解雇条項にあてはまったら解雇ができる

 →まずできないと考える。できるかできないかは専門家でも確定的にいえない(言えることはリスクがあるということだけ)。日常の指導注意の証拠書面、従業員の反応と会社の反応、解雇に至るプロセス、解雇事由などのほうが重要。

○年俸制では残業が要らない、年俸制は賃金の上げ下げがやりやすい

 →年俸制でも残業代は要る、年俸制は賃金の上げ下げがやりやすいというのは都市伝説。プロ野球の年俸はヒット1本、出塁1回いくら、とすべて決まっているから成り立っている。中小企業でそんなルールを作るのは不可能。

 

どうか、皆さん、「会社を守る就業規則」とか、「戦略的就業規則」とか、「鉄壁の就業規則」という営業文句に騙されないでください。そんな経営者に有利すぎる「就業規則」は現状の労働関係諸法令、裁判実務では許されていないのです。

 

といいながら、営業させて戴きます(笑)。

 

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